共感してるのに炎上する? 〜『炎上CMでよみとくジェンダー論』を読んで〜
この本、面白かった。
引っかかりがなく、一気に読める。それでいて、学べる部分が多い。
著者が爆笑が起きる講義で人気、と言うのも頷ける。
ジェンダー論って、ちょっとでもアンフェアだと感じると読みたくなくなってしまうのだが、
この著者の立場はフェアだと感じた。
さて、一番この本をよんでよかったと思うのは、「広告の在り方」を改めて考えさせられたところだ。
今までは、広告(とか、マーケティング)は、共感が強い、と言われていたし、思っていた。
ところが、昨今のCMの状況を見ていると、共感して、現状を追認するだけだと売れるどころか、逆に炎上して企業のイメージを毀損してしまうケースが目立つ。
例えば、本作にもあげられているように、「ワンオペ育児」をしている母親を励ます内容のCM。ターゲティングして、現状に共感して、その上で「応援」しているのに、性的役割分担を強調していると、批判されてしまう。
これからは、それだけじゃダメなんだ。半歩先の理想、を示さなければならない。
まあ考えてみれば、当たり前のことである。
広告とは、モノを売るためにある。モノを売って、買い手に新しい価値を提供する。
何かを売る広告において、現状を追認すると言うことは、モノを買ったところで、枠組み、例えば性的役割分担から逃れることはできない、とうのを認めているのと同じだ。
例えその調味料とか、洗剤とかで、ちょっと便利になったとして、女が家事をするのは変わらない、と言う風に。
あるモノ1つ買うことで、枠組みそのものを変えてしまうのは、難しいかもしれない。
でも、広告によって希望を示すことならできる。これから向かって行きたい方向に、提案することなら。
そう考えると、炎上しているのは、CM視聴者の高い期待の現れなのかも、と思える。