お金というより時間かな〜『お金の減らし方』を読んで〜
タイトルに惹かれた。お金の増やし方、じゃなくて減らし方。シンプルなのに、常識と逆のことを言うだけで、こんなに興味を引くものになるなんて、やはり言葉の力は大きい。
内容は、お金を減らす時(=何か買い物をするとき)自分の本当に欲しいものを見極めることが、幸せにつながる、というもの。消費社会の現代は、一見皆欲しいものを買えているように見えるが、そうではない、と著者は言う。
例えば、SNSなどで「人に羨ましがられるため」「いいねをたくさんもらうため」に何かを買ったり、高級な食事をしたり、旅行に行ったりする。それは、自分のために本当の満足を得られていないのではないか。
そうではなく、自分の好きを見極め、自分に投資をして、突き詰めていく。自分の好きなものが、自分を幸せにしてくれるのだ。
個人的には、これは「お金の減らし方」と言うより、「時間の減らし方」かなと思っている。
あまり私は、純粋にSNSのために何かお金をかけて消費したりすることって少ない。
ただ、時間や思考はSNSに奪われがちだ。
何かを食べにいった時、「あ、これは映えそうだ」と思ったら写真を取ってインスタにアップして満足する。
食べている時も、いいねの数を気にしてしまう。
食事に限らず、旅行とかも旅行そのものより、いいねの数を楽しみにしたりしてしまう。
また、他の人の投稿を見ると羨ましさで心がざわついてしまう。
SNSを始めると、その思考にとらわれがちである。
そんな時間と自分の頭が勿体無い気がする。
そんなことしているぐらいだったら、もう1冊本を読みたいし、将来のために英語を勉強したいし、ピアノを練習したいし、可愛くなるために筋トレしたい。
何かを買う時、も本書に書いてある通りそうなのだが、何かをしている時、時間をかけている時、「自分が本当にしたいことのために時間をかけれているか」を問えるような冷静さを持ちたいと思う。お金は、節約できるけど、時間は黙っていても減ってしまうものだから。
余談だが、著者の森先生の文体が、実年齢よりずっと若く見えた。定年後、と書いてあるのに驚いた。読み始めた時は、著者プロフィールを見ていなかったので、40代ぐらいの方かと思っていた。「僕」という一人称もあるのかもしれないが、自分の好きなことに情熱があるから文体にも若さがあるのかもしれない。それにしても、自分の趣味である庭園鉄道のために、バイトとして小説を書き始めて、1作目で大ヒットしたなんて、才能と行動力の塊だ。ここで、「私には真似できない」と思うか、「何かやってみよう」と思うかが、試されている気がする。